



地域とともに、ここに〝ある〟
地域とともに、人の暮らしと希望を〝耕す〟
扉を開けた瞬間から、病院とも支援施設とも違う、柔らかくあたたかな空気に包まれました。「おかえり」を待っていてくれた家のようでした。出迎えてくださったのはピアサポーターでした。声をかけてくださる笑顔が自然で、距離が近すぎるわけでも遠すぎるわけでもなく、そっと寄り添ってもらえているような心地よさがありました。ここは「支援される場所」というより、「共にある場所」なのだと、感じました。治療と向き合う中で、ファイナンシャルプランナーや社会福祉士の資格を取得され、今はここで、誰かの暮らしと心を支えています。ご自身の経験が、誰かの希望や安心につながっている。その姿そのものが、ここに集う人たちの力になっているのだと感じました。「何かを任される場所」ではなく、「やりたいと思った気持ちが芽を出せる土壌」が、ここにはあります。
その空気を育んでいるのが代表の松本京子さんの存在です。「地域にも、がん患者さんや、その影響を受けた方が、自分自身を癒し、再び日常を取り戻すことができる場所が必要です。 ここは特別な場所というより、地域に必要な〝ひとつ〟です」。松本さんは、誰かの「やりたい」を否定するのではなく、「それ、いいやん」と背中を押す方です。一人ひとりの思いを大切にし、芽が出るまで見守り、必要な時にはそっと支えてくださいます。その姿勢こそが、ここが「居場所」であり「コミュニティ」であり、人と人の思いを育む「畑」のような存在である理由なのだと思いました。
病気と向き合うことは、決して人生の休止ではありません。立ち止まる時間も、涙の瞬間も、戸惑いのときもあります。そんな時、寄り添ってくれる場所が地域の中にあることは、どれほど心強いことでしょうか。「なごみの家」は、つらさに寄り添うだけの場所ではありません。自分の気持ちをゆっくり整理し、「わかってくれる人がいる」と実感できる場所です。そして「誰かの力になりたい」そんな思いを、一緒に育てていける場所です。ここで芽生えた気持ちは、やがて地域へ戻り、また誰かを支えるやさしい力へとつながっていくのではないかと思いました。
人はみな、ある日、支えられる側にもなり、支える側にもなります。その循環を、あたたかく、自然な形で受け止めてくれる場所。この場所を必要としているのは、「特別な誰か」ではなく、地域そのものなのだと気づきました。地域とともに、ここに〝ある〟。地域とともに、人の暮らしと希望を〝耕す〟。「Cancer Support 神戸なごみの家」は、そんなあたたかさを育む居場所でした。
取材ノート
元ちゃんハウス 櫻井千佳 管理栄養士

活 動
「場」の提供
月・火・木・金の11時から16時、不定期に水・土をがんに影響を受ける人たちを迎え入れる場として開設。予約は不要で、入口で「お茶代」の100円を払うことで、1階のリビングスペースでの談話や、個室での相談、2階の図書コーナーやベッドスペースでの休憩など、自在に館内を利用できます。
「相談」
がんに関する治療や療養、生活など、がんに影響を受ける人たちが抱える悩みや困りごとを、経験豊富ながん看護専門看護師が、時間制限を設けずに、個別に相談に応じます。
「講座・セミナー」
2階のスペースで利用者さんを対象としたがんについての正しい知識を伝える専門職による講演会や生活の質を高める各種のセミナーを開催。また、医療や介護に従事したり、地域で活動をする人たちを対象にした「集える」場としても開放しています。
これまでの沿革
1995年の阪神淡路大震災の経験を機に訪問看護師として幅広く活動する松本京子さんが、その活動の傍らホームホスピス、暮らしの保健室に次いで、がんに影響を受ける人たちを広く迎え入れる場として2023年4月に開設。JR兵庫駅から徒歩4分という立地にある2階建ての戸建を、クラウドファンディングなど全国の支援者から寄せられた資金をもとに全面改装してオープンしました。
体制・運営
認定NPO法人神戸なごみの家として2009年9月に設立。同事業として「ホームホスピス 神戸なごみの家(2009年)」、「なごみサロン 暮らしの保健室(2015年)」、「Cancer Support 神戸なごみの家(2023年)」を開設・運営。別組織として運営する訪問看護事業などとの連携で、がんの専門知識を備えた看護師などの医療職が常駐できる体制を構築。ピアサポーターなどのボランティも加わり、臨機応変に訪問する人たちの対応をしています。
Cancer Support 神戸なごみの家について
住所:〒652-0805 神戸市兵庫区羽坂通4-2-16
ホームページ:https://nagominoiekobe.com/
お問い合わせ
TEL:078-579-7160
メール:nagomisalon@kpe.biglobe.ne.jp

