



活動に込めた思いを大切に
まちに息づく人の循環
2018年、看護師の佐藤京子さん、ピアサポーターの西村和佳子さんが中心となり、日和山カフェは誕生しました。代表の佐藤さんが病院で働くなかで何度も耳にしたのは、「他の人はどうしているの?」という声でした。相談室では一対一の話しかできず、化学療法センターではカーテンの向こうに人の気配を感じながらも会話はできない。待合室でも深い話は難しい。だからこそ、病院の外に安心して話せる場所をつくりたいという思いが芽生えたといいます。
また、ピアサポートが広まりはじめたころ、乳がん経験者の患者会に参加した際に、参加者が「同じ経験をした人と話せてほっとした」と涙ぐむ姿を見たことも、佐藤さんの心に残りました。家族にさえ「金銭的に迷惑をかけている」と遠慮して本音を言えない人がいる。そんな人たちが、気兼ねなく気持ちを話せる場所をつくりたい。それが日和山カフェの原点です。
佐藤さんは病院勤務のなかでも、地域に根ざした支援の必要性を強く感じ、医療者と患者、家族との間にある〝隙間〟を埋めるような存在になりたい。その思いが活動を支える大きな柱になっています。 地域がん診療連携拠点病院には院内サロンがあり、腫瘍内科の医師の講義や患者さんの体験談を共有する場がありました。そんな土壌があったことも、日和山カフェの誕生を後押ししたのかもしれません。
現在、日和山カフェは石巻市内の公共施設を借りて活動を続けています。その歩みのなかでは、形や仲間、資金のあり方など、さまざまな変化がありました。それでも「形にこだわるより、今できる形で続けていきたい」という思いを大切にしているといいます。活動を継続していく中ではそのときどきで取り組みたい活動も、思いに共感して共に動く仲間も、そして資金の状況も変わっていくものです。形にこだわることも大切かもしれませんが、無理をしてまで形を保つよりも、活動に込めた思いを大切にしながら続けていくことが何より大切なのだと、改めて感じました。
日和山カフェは、石巻のまちの中で、そっと心を支え合う居場所になっています。誰かの言葉に救われ、また別の誰かの背中を押す。その小さな循環が、確かにこのまちに息づいている。制度のすき間にこぼれ落ちそうな思いをすくい上げ、静かに寄り添いながら、日和山カフェは今日も石巻の片隅で灯をともし続けています。
取材ノート
元ちゃんハウス 若林円花 看護師

活 動
「カフェ」
がん患者さんやご家族、ご遺族、がん医療に携わるスタッフ、がんに関心をお持ちの方などが集い、立場を越えて「がんについて、人生について」自由に語り合う場です。石巻市の文化施設などで毎月1回をベースに定期的に開催しています。がんの正しい知識を身につける目的から「大人のがんの勉強会」や専門家を招いての「学習会」「料理教室」なども行っています。
「がんの啓発活動」
石巻地域づくり基金助成金の活動の一環として石巻赤十字病院と共催したがん啓発の講演会や地域の小学校でのがん教育外部講師、医療機関などでの研修会の講師など、さまざまな地域の場でがんの啓発活動に取り組んでいます。
「心のケア・相互支援のコミュニティーづくり」
がんを経験した方やご家族、ご遺族が、語りや出会いを通してつながり、互いに支え合う活動です。一人ひとりの気持ちに寄り添いながら、安心して過ごせる時間や関係づくりを大切にしています。語ること、聴くことの積み重ねを通じて、がんとともに生きる人たちが自分らしさを取り戻し、地域の中で穏やかに過ごしていけるよう、ピアサポート(仲間による支え合い)の輪を広げています。
これまでの沿革
石巻赤十字病院などの看護師として46年、がん相談支援センターの専門相談員として9年、多くのがん患者さんや家族と臨床の場で寄り添ってきた佐藤京子さん。自らの経験をもとに、病院退職を契機に がん患者さん・ご家族が安心して集える地域の場である「日和山カフェ」 を2018年1月、がん経験者・遺族等仲間4人でスタートしました。
体制・運営
任意団体として活動。コアとなるメンバーは代表の佐藤さんの他、いずれもこれまでに佐藤さんに相談を受けた経験を持つがん患者や家族、遺族などがボランティアとして参加。開設時からオブザーバーとして鈴木聡医師も名を連ねます。運営資金は病院や企業などが行う研修会での収益や各種の助成金、賛同者から寄せられる寄付がベースです。
日和山カフェについて
住所:宮城県石巻市
ホームページ https://hiyoriyamacafe.jimdofree.com/
お問い合わせ TEL:070-7772-0127

